痴レ者につき。

井の中の蛙が、井の中から空を見上げたり、井の中に落ちてきた枯れ葉を眺めては、「これは何だらう」と愚考する系チラシの裏。

エレン・ベーカーの消費傾向から、現行のキャラクター消費について妄想してみた4月10日。

 最近、「エレン・ベーカー」というキャラクターが巷で人気を博しております。博しておりました?
今回の記事は、彼女の消費活動から、今日のキャラクター消費について妄想してみようとするものです。
予め断っておきますが著作権がどうこうとか、そういうものには一切触れませんので、ご認識の程をお願い致します。

 

 


さて。まずは基本情報をば。
「エレン・ベーカー」は東京書籍が発行し、日本の中学校に配布されている教科書『NEW HORIZON』に出てくるキャラクターです。
2016年度版より登場し、そのイラストが大変可愛い(萌える)ものであったため、人気を博すようになった。
んで、さすがに対象が教科書なので、二次創作が活発になるのはどうなのよと別の観点からも話題になっている。

そんな感じでございますね。

自分も生徒時代は『NEW HORIZON』を使用していたはずなので、もしかしたら当時のエレン・ベーカーは知っているのかもしれません。
名前がエレン・ベーカーではなかった気がするのですが、どうだったかな。
しかし、そういう設定(ALT)のキャラクターがいたような印象はございます。
中学校時代に教科書を開いていた記憶があんまり無いので勘違いの可能性も拭い切れませんが。

それはそれとして。

今回気になるのは、「エレン・ベーカー」の背景たるテクストです。

繰り返しますが、彼女は中学教科書に登場するキャラクターです。
大抵のn次創作者が、そのテクスト(現行の教科書)を読んではいないはずなのです。
では、彼女のキャラクターとしての設定や、物語は、どのように付加されているのか?
それを考えることが、今日のキャラクター消費を知る一端になるのでないかと妄想しているのです。

取り敢えずとして、思いついた可能性を列挙していきます。


a.流出している最小限の設定/物語等から、妄想を膨らませる。

b.「外国人」「教師」等、他のキャラクターが有している共通設定から、妄想を引っ張ってくる。

c.自分が生徒時代に読んでいた教科書に記載されていた(ような)設定/物語を付与する。

d.容姿と名前だけを採用し、設定/物語は自分のオリジナルを付与する。


――以上の4パターンに分類できるんじゃないかな、と思っております。
もちろん完全に分けられているのではなく、組み合わせパターンも有るでしょう。



aパターンについて。
野球のスイングを真似するポーズ系の画像や、野球ネタに関してはこのパターンではないでしょうか。
あくまで主観的な感想ですが、あまり数は多くないような印象です。
むしろ、他のキャラクターが同じポーズを取っている画像(他のキャラクターのn次創作)が多いイメージ。


bパターンについて。
一番多く目にしたような印象。
すなわち、他の「外国人キャラクター」や「教師キャラクター」と同じシチュエーションを描き出すというものです。
いわゆる、「キャラ(役割)が同じならキャラクターも似てくる」事例ではないでしょうか。
進撃の巨人』コラボ系も、このパターンだと思います。
(「名前」という共通項からの妄想)

cパターンについて。
bパターンと似て非なるパターン。
英語の教科書に出てきたようなシチュエーションを描き出すという妄想。
n次創作者が読んでいた教科書のALTキャラクターと同じシチュエーションを使用しているという意味ではbパターンとまとめてしまっても良いのかもしれません。
しかし、cパターンは「教科書というテクストを重視した妄想」ということで別分類にしてみました。
bパターンは「キャラ(役割)を重視した妄想」ということになります。

dパターンについて。
意外にも、殆ど目にしていないパターン。
彼女を主役にしたSS等が出てくればまた変わってくるのかもしれませんが、自分が目にした限りでは、完全オリジナルなシチュエーションはなかったように認識しています。

(そもそもの話、完全オリジナルかどうかを判断するのが困難という話ではありますが)
一枚のイラストとして、ならそこそこ目にはしているので、むしろ「設定も物語も付与しない妄想」のほうが近いのかもしれません。
それはそれで、また別パターンな気もしてしまいますが。


はてさて。
あくまでも自分の主観で、ということを繰り返し強調しますが、bパターンのn次創作が多いような印象受けます。
そして、その印象が実際の数字、すなわち傾向と一致しているのであれば、現行のキャラクター消費傾向は、

・キャラクターに設定/物語を付与する。

・その設定/物語は、他のキャラクター、あるいはキャラ(役割)からの引用である。

――という仮説が立てられます。……よね?



ガンダム』の、一年戦争の年表を補完していたような、物語を想起する消費傾向ではなく。
そして、『エヴァ』に代表される、データベース消費ともまた違う傾向にあると思われます。
データベース、すなわち個々の記号に着目して消費を行っているわけではなく、他のキャラクターあるいはキャラ(役割)に着目する消費は、データベース消費とは異なるのではないでしょうか。
あるいは、データベースの構築方法が変異した、とも言えるのかもしれません。

「記号(萌え要素)」から、「キャラ(役割)」のデータベースへ、みたいな。


あるいは、そこから「物語のデータベース」を構築している可能性すらあります。



我ながらよく分からない結論に帰着してしまいました。

と言うか、参考資料がまとめきれてないので、そのまま思考もまとまらなかった残念な感じ。

ですが、エレン・ベーカーの消費傾向は、萌え要素に着目しているとはどうしても思えないんですよね。
では何に着目しているかを考えた時に、キャラクターそのものに着目しているのではないかと、ふと感じたのです。

過激なことを言えば、エレン・ベーカーの背後に、別のキャラクターを想起しているのではないか、とも言えます。
もしかすると、それが《ゴースト》の概念なのかもしれませんが……それともまた異なる気はするのですよね。

一つだけ、確かなことを言えば、現行のキャラクター消費は「キャラクターを立てる」あるいは「キャラを立てる」ことに特化している点でしょう。
物語なきキャラクターを、ここまで魅力的に仕立てあげているのですから。

エレン・ベーカー先生のさらなるn次創作に期待しつつ、今後の動向に注目していきたいですね。

 

 

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