痴レ者につき。

井の中の蛙が、井の中から空を見上げたり、井の中に落ちてきた枯れ葉を眺めては、「これは何だらう」と愚考する系チラシの裏。

やっと読めた書籍版『ゴブリンスレイヤー』の感想を喜々として吐き出す4月7日。

 やっと読めましたよ、書籍版『ゴブリンスレイヤー』!
AAスレ版からのファンだったので、ずっと楽しみにしておりました。
引っ越しのドタバタで中々読めていませんでしたが、遂に読み終わりましたので、その感想を喜々として吐き出します!
ネタバレ注意です!

 

 

 


率直な感想は、

 

「思ってたよりもAAスレ版に準じているんだな」

「ガッツリTRPGのメタ作品として仕上げてきたな」

 ――の二点。

 

前者に関しては言うまでもなく、描かれる順番に多少の差異があったとはいえ、殆どAAスレ版と同じ物語の流れ。
どころか、キャラクターのイラストに関しても、結構AAスレ版に沿ってて大笑いしました。
受付嬢、ちひろさんに似過ぎですよぅ。髪型同じなのはやり過ぎなのではないだらうか。
槍使いもかなりクーフーリンの兄貴に似てますし。
重戦士も結構ガッツ似だよなあ。
補正が効いているのは否定できませんが、それにしてもこの面々はそっくりだと思います。

一番AAスレ版との乖離(?)が目立ったのは、ゴブリンとオーガを除けば、牛飼娘でしょうか。
と言うか、AAスレ版ではメインヒロインの一人だったはずなのに、書籍版ではあんまりヒロインっぽさがないように見えてしまった不思議
カラーイラストもありませんしね……。
MTGフレーバーテキスト風の文言は非常に好みなので、そこに文句はつけられないのですが。

そもそもとして、僕が一番可愛いと感じているのは魔女なので、ゴブスレさんのヒロインに興味はないのだ。
彼女の言う冒険(デート)の真意を妄想するのが楽しいのだ。

良い意味でキャラが立ったのは、ウルキアガ――僧侶ですね。
AAスレ版でも、位階を上げて竜を目指すという特異なキャラクターでしたが、チーズ好きという萌ポイントが追加されたり、後衛らしい呪文を披露したりと、躍進が目立ったように感じます。
まあ、あの三人組は「長耳娘カワイイヤッター!」で一括りにできてしまっていた面もあるため、キャラ付けは大事でしょう。
しかし、それでも爪を武器にする後衛ってどうなんだらう。

AAスレと大きく違うのは、オーガ討伐後の日常風景の描写。
と言うか、ここの描写が牛飼娘との交流だけでなく、今までに出会った人物たちとの交流に重きが置かれた為、牛飼娘のヒロインっぽさが減少したのかなと感じます
この後の『長い夜』につなげるにはこちらのほうが間違いなく良いので、一概には何とも言えませんね。
「長耳娘カワイイヤッター!」だったのも大きい。
超勇者のネタが消えたのは残念でしたが、まあ、書けんよな。仕方ない。

中程度違うのは、『長い夜』の描写。
AAスレ版では冒険者達の回想として、ゴブスレからの依頼シーンが描写されましたが、書籍版では時系列通りに依頼シーン、『長い夜』と描写されました。
依頼シーンがAAスレ版よりも丁寧に書かれていたので、緊迫した戦闘シーンの前に挟むよりも良かったとは思うのですが(「命は裁量できない」というゴブスレさんの人となりも色濃く出るシーンとなりましたし)、しかしそのせいでエンディングのオチが弱くなったなという残念さもあります。
槍使いが「酒を一杯奢れ」と言ったから、全員に一杯だけ奢るという本来のオチは、他の冒険者が報酬を提示しないからこそ成立するオチなように感じるんですよねー。魔女の「一杯」がまさにそれなわけで、別に彼女は僧侶と同じように、他の報酬を提示しても良かったはず。
長耳娘や僧侶達が思い思いの報酬を提示した以上、「全員に一杯だけ」は成立しない気がしますし、その上、女神官だけが特別な報酬をもらうという唯一性も消え去ってしまったように感じたのですが、どうでしょう?
ここのオチは変えて欲しかった気がするなあ。と言うか、別にオチなくて良かったんじゃないでしょうか。

 


後者に関して。
元々『ゴブリンスレイヤー』はTRPG的な話題からの発展で、それ故にエンディングにも神々(GM)の遊戯だと描かれましたが、ここまでガッツリゲームに寄せてきたのは意外でした。
まさか「NPC」「経験点」なんてワードまで出てくるとは……。
そういう点があるので、結構なハイコンテクスト作品になってしまったんじゃないかなという不安のようなものも覚えます。
《聖壁(プロテクション)》を牢獄に使うシーンは、結構伝わりづらいように思いましたし。伝わりづらいというより、発想に至らない?
TRPGに触れたり、せめてTRPGに近しいCRPGを遊んだことがないと、状況や面白さがピンと来ないんじゃないかな、と。
今はTRPGもそこそこメジャーにはなってきているみたいですが、どこまで通じるんだろうなあ。
結構、年上(?)向けの作品なのかもしれませんね。
ゴブリンの鳴き声がアルファベット表記だったのも、どことなく懐かしさを感じましたし。
文章の書き方も、結構カッチリしてましたしね。
三人称でカメラを動かし続ける視点の描き方は、カメラの動きが自然ならとても読みやすく、好感が持てます。

戦闘シーン、というかダメージ描写も、エグさが伝わってきてグッド
戦闘に関しては、AAよりも分かりやすかったかも。
もちろん、《火球》がどんな術なのか、ある程度イメージできる読者だったからというのはありますけども。
まあ、ゲームを知らない人間が『ゴブリンスレイヤー』を手に取るかって言うと、首をかしげる面もあるので、別にそれで良いのか。

しかし、一点。
これは間違いなく編集が悪いのですが、殆どの文章が短文で改行しているにも関わらず、一部の文章が中途半端に長く、変な改行をされていたのは、とてもとても残念でした。
見栄えが悪い。編集は何故そこを指摘しなかったのか。治さなかったのか。
二箇所程度だったように記憶しています。それはなくすべきだっただろうに……。

 

と、残念な点も挙げましたが、滅茶苦茶楽しめました。
久しぶりにキャラクター小説ではない小説を読んだような印象です。
AAスレ発ってことを考えると、非常に不思議な読後感ですけどね。

若い頃にライトノベルを読んでいて、最近は読めていないという方を中心に、滅茶苦茶オススメしたい作品です。
面白かった!


しっかしこれ、続編は出るのだろうか。
出たら買って読むんでしょうけど、どんな展開になるのか想像できない。

個人的には、『モスクワ2160』の小説化とか期待していたりします。
難しいのかな、やっぱり。

と言うか、オリジナルを書いて欲しいですね。先の展開が分かっていても楽しめましたが、先の展開を知らない楽しみ方もしたいです。

 

 

ゴブリンスレイヤー (GA文庫)

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Amazonのリンク貼って気づいたんですが、既に続刊は予定されている、だと……!

 

 

ゴブリンスレイヤー2 (GA文庫)

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